乳酸菌と乳酸菌生産物質は、実は異なるものです。まずは乳酸菌とはどういうものなのか?を正確に理解しておきましょう。糖を分解して「乳酸」を生産することによってエネルギーをつくる「細菌の総称」が乳酸菌であり、具体的には、以下の定義に当てはまるもののことを指します。
棒状又は円柱状の「桿菌」か、球状の「球菌」であること
食べたブドウ糖の50%を乳酸として代謝排出すること
陽性反応を示す
陰性反応を示す
自ら動くことはない
毒性物質を出さない安全性の高い菌
胞子をつくらない
上記のような定義を持つ乳酸菌ですが、乳酸菌生産物質は、乳酸菌の「代謝物の総称」であり、腸内でビフィズス菌などの善玉乳酸菌が作りだしている“物質”のことなのです。
乳酸菌そのものを、ヨーグルトや乳酸菌飲料などで取り入れると、腸内環境が整えられて健康に役立つというのは間違いではありません。しかし、乳酸菌そのものが腸に入っても、その乳酸菌はもともと腸内に棲んでいた菌ではないため、腸内で増殖・定着することがなかなか難しく、通過菌として体外に排出されてしまうことが多いのです。
これに対して、乳酸菌生産物質は、生きた菌ではありません。乳酸菌生産物質は、もともと腸の中の善玉菌が代謝している物質を摂取することで健康に役立つ、という考えのもと作られております。乳酸菌生産物質を摂ることで、腸内環境も改善しつつ、有用成分がダイレクトに体内に吸収されます。これに対して乳酸菌(生菌)そのものが腸に入っても、もともと腸内に棲んでいる菌とは異なるため、腸内で増殖・定着することがなかなか難しいと言われています。
両者の働きを簡単に比較すると、以下の図のようになります。
これまで、整腸作用を中心として一般消費者に訴求してきた乳酸菌製品。しかし、私たちが今まで乳酸菌の作用として認識してきた保健効果の多くは、乳酸菌が生成・放出した乳酸菌生産物質によるものであることは意外に知られていません。
現在、腸内環境を改善させる機能性食品は、プロバイオティクス、プレバイオティクス、バイオジェニックスの3種類に分類されています。プロバイオティクスは、乳酸菌の生菌や生菌製剤を摂取することで、腸内環境を改善させる考え方であり、オリゴ糖などのように腸内の善玉菌であるビフィズス菌のエサとなるような物質を摂取することで、腸内環境を改善しようというのがプレバイオティクスの考え方です。
しかし、腸内フローラの機能性は加齢とともに次第に低下してきます。すなわち、善玉菌のビフィズス菌自体が減ってくるのです。従って、腸自体が老化している状態に善玉菌や善玉菌のエサとなるようなものを外からいくら摂取させたところで、その多くは通過菌として体外に排出されてしまいます。それこそ、1~2リットルのヨーグルトを毎日摂取しないと、腸内環墳を改善させることはできないことになります。
そこで、腸自体のコンディションに関係なく、腸内環境を確実に改善させる方法として医療関係者が注目しているのがバイオジェニックスの考え方です。乳酸菌や植物などによって生成された生理活性物質を機能性食品の形で摂り入れることで、腸管免疫を活性させると同時に、腸内フローラを改善させる働きを持ちます。各種の免疫賦活物質やビタミン類、植物フラボノイドなどがその代表的な素材であり、乳酸菌生産物質もこのカテゴリーに該当します。
バイオジェニックスの働きが、プロバイオティクスやプレバイオティクスの働きと大きく異なるのは、後者が腸内フローラを改善させることで疾病に間接的に働きかけるのに対して、前者では腸内フローラを改善させるだけでなく、腸管免疫や生理活性作用を介して疾病に直接働きかける点にあります。従って、疾病に対して直接的・間接的の両面から効果を発揮するのがバイオジェニックスのメリットなのです。そのため、抗ストレスをはじめとする生体調節機能や、免接賦活・抗アレルギーといった生体防御機能、抗腫瘍効果、血圧降下や血糖低下作用、コレステロール低下作用に代表される疾病予防や疾病回復作用など、幅広い機能性が期待できるわけです。
図:バイオジェニックスの機能性食品としての作用機序